漱石の『こゝろ』を読む

 今、朝日新聞で、夏目漱石の有名な小説である『こゝろ』が再連載されている。元々は、ちょうど百年前に、大阪朝日新聞に連載されていた小説だ。その事に触発されて、『こゝろ』を再読する気になった。本棚にあった文庫本で、二日ほどかけて読み切った。
 歳をとってから読んだ『こゝろ』は、主たる筋書よりも、作品中の「先生」が厭世的になっていく伏線となっている財産に関する記述が、真実味を帯びて印象に残った。
 作品中で、漱石は、「先生」に、下記のように語らせている。批評する力量はないので、それをそのまま抜粋しておきたい。

「・・・しかし悪い人間という一種の人間が世の中にあると君は思っているんですか。そんな鋳型に入れたような悪人は世の中にあるはずがありませんよ。平生はみんな善人なんです。少なくともみんなふつうの人間なんです。それが、いざというまぎわに、急に悪人に変わるんだから恐ろしいのです。だから油断ができないんです」

「金さ君。金を見ると、どんな君子でも悪人になるのさ」

「・・・私は財産のことをいうときっと興奮するんです。君にはどう見えるかしらないが、私はこれでたいへん執念深い男なんだから。人から受けた屈辱や損害は、十年たっても二十年たっても忘れやしないんだから」

「私はひとに欺かれたのです。しかも血のつづいた親戚のものから欺かれたのです。私はけっしてそれを忘れないのです。私の父の前には善人であったらしい彼らは、父の死ぬやいなや許しがたい不徳義漢に変ったのです。・・・」

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この記事へのコメント

godor
2014年07月17日 16:21
昔読みましたが、内容はよく覚えていません。
何だか、心がどんどん暗くなります。
平和とか戦争とかに置き換えても同じ事が言えるかもしれないですね。
小生は、時々外国の古典というか、
完訳のガリバー、ロビンソンやドンキホーテ、無情など読み返しています。

MEISAN
2014年07月19日 10:47
確かに暗くて重い感じのする小説ですね。話の結末が、「先生」による遺書を残しての自死なのですから。
漱石は、人間の心の内奥を見つめた作家だなあと思いました。

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